1953年、神戸港から 再びフランスに向けて旅立った 銅版画家がいた―――。
浜口陽三(1909-2000)は、戦後の混乱期の日本で、絵筆を銅版の道具にもちかえ、銅版画家として本格的に活動をはじめました。物資が困窮している時代、道具は入手できるものを工夫しながら女性画・下町風景・静物を銅版に描きだします。 東京芸術大学で彫刻を学んでいた浜口は21歳で初めてフランスに渡り油彩を学びますが、1939年第二次世界大戦の勃発によって帰国。戦後日本で制作した銅版画作品にはカラーメゾチントの開拓者としての素質を垣間見ることができ、版面にはモダンな光景がひろがっています。再びフランスの地を踏んで、浜口はサンパウロ・ビエンナーレグランプリ受賞(1957年)をはじめ数々の世界展での評価を獲得します。 今秋コレクション展では、本年発見された油彩画『江戸水郷』1940年(「紀元二千六百年記念美術創作秋季展」同年出品)1950年代に制作した裸婦画を2点を公開し、浜口陽三が油彩から銅版画へ表現を転進するさまと作品をご紹介します。
出品内容 浜口陽三:初期作品と渡仏直後に制作したカラーメゾチント作品を中心に60点余展示。 写真資料、銅版画道具。
南桂子:15点余(カラーエッチング) |