ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、銅版画の可能性について多角的に見直す試みを展開しています。「銅版画の地平」と名づけたこの企画展は、浜口陽三が生み出したカラーメゾチントの世界を支柱として、銅版画の源流から地平線を漂う未来の行方を見渡すものです。
今回はそのシリーズ第2回として、深沢幸雄・加納光於・柳澤紀子・池田良二・山本容子・山口啓介をとりあげます。浜口陽三は、1955年にカラーメゾチントという、4版の銅版を刷りあわせて、独特のグラデーションで豊かな諧調を表現するという銅版画の新たな技法を開拓し、他の追随を許さない独自の世界を確立しました。その後1960年代から現在にかけて銅版画の表現は、多様な広がりと、強烈なイメージを展開しています。本展覧会でとりあげた6人はその代表的な作家達といえます。
深沢幸雄は、あらゆる技法を駆使し、生の根源を銅版画で追求してきました。加納光於は、幻想的なイメージにみちた作品によって独創的な作品を創りだしています。柳澤紀子の作品は、時空間を超えた、人類が共有している原始的な風景を感じさせ、池田良二は、風化する時の堆積を銅版に映し出し深い神秘性を表現します。山本容子は軽快な自由さで銅版画の新たな魅力を打ち出し幅広い層のファンを開拓しました。そして山口啓介は、従来の銅版画のスケールを超えた作品を生み出し次世代への可能性を予感させます。
6人の代表的作品作品50点と浜口陽三の作品20点、あわせて70余点で構成した本展は、現代銅版画の動向を知り、今後の可能性を探る絶好の機会となるでしょう。
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