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毛糸と、小鳥 浜口陽三・南桂子 銅版画二人展 【前期】 2013年8月27日(火)~10月23日(水)【後期】10月29日(火)~2014年1月13日(月祝)

浜口陽三(1909~2000)と南桂子(1911~2004)は、戦後、パリを制作の地と定め、各々の詩情を銅版画の中に込めました。

日常の静けさをモチーフにした浜口陽三。彼の考案したカラーメゾチントという銅版画の技法は、それまで誰も見たことのない、柔らかで叙情的な色彩を生みました。心穏やかな生活を思わせる毛糸や食卓の果実。刻まれた銅板から生まれた黒が無限の色合いを秘めて、柔らかな布のようにそれを包み込んでいます。彼の神秘的な作品は、20世紀後半、国際的に賞賛されました。

誰も知らない国を彷徨う南桂子のエッチングの世界は、近年になって若い世代の注目を浴び始めました。小鳥、少女、花やお城。訪ねたはずのない場所なのに不思議な既視感(と懐かしさ)を覚えます。童話も書いていた作家の、繊細なもうひとつの物語です。

長い会期の展覧会ですが、前期と後期で作品を総入れ替えいたします。二人の織り成す静かな世界を是非ごゆっくりお楽しみください。

近づくと、息づいているような静物画のうす闇。

浜口陽三(1909~2000)の銅版画は、銅板を織物のように細かく刻んで、光と闇を生み出します。20世紀半ば、新しい時代の美術表現として銅版画を選んだ浜口は、ビロードのような色彩表現を求めて独自の技法を開拓しました。指先で触れてもたどれないほど微妙な銅の彫り加減によって、作品には無限の柔らかさが生まれ、さくらんぼやレモンに永遠の時間が流れます。

本展は、半世紀以上を経た今でも新鮮な魅力をたたえる浜口の銅版画の魅力を、現代美術と組み合わせて21世紀風に紹介しようと企画しました。詩人で美術にも造詣の深い高橋睦郎氏を顧問としてお迎えし、精神性の高い繊細な作品ばかりを紹介します。

今春の展覧会では、浜口陽三の作品とともに、寄贈いただいた木版画を展示します。伊東深水(1898-1972)、川瀬巴水(1883-1957)等による、新版画と呼ばれる作品群です。
遠い異国の地で制作を続けた浜口も、東京の風俗や風景を描出した新版画の作家たちも、失われかけた伝統的な技法やテーマに新たな視点を与え、当代の表現をきりひらきました。卓上の果物、女性の微笑、夜の静けさ… 画家の眼によって切り取られた日常の一瞬が、版に刻まれ、現代の私たちの前に時を超えて現われます。

2012年秋の企画展 浜口陽三の世界 2012年9月15日(土)~12月24日(月)

―幻のインタビュー初公開―

この秋の展覧会では、国際的に活躍した銅版画家、浜口陽三の幻のインタビューを初公開します。インタビュアーはNHK特派員として7年間パリに住み、作家と交流のあったフランス文学者、柏倉康夫氏です。時は1987年、新天地サンフランシスコで制作意欲をもやす浜口陽三が、柏倉氏の質問に導かれて、作品と人生について振り返ります。
会話からただようパリの自由な空気と共に、静謐な作品の数々をご鑑賞ください。

南桂子展 船の旅 ―詩と童話と版画の世界― 2012年5月12日(土)~7月31日(火)

南桂子の詩と童話の初公開
展覧会タイトルになった「船の旅」は1953年の冬、銅版画を学ぶためにフランスに渡る、その船の中で書きつけた詩です。七章からなる詩は、台湾、香港、シンガポールと寄港しながら見知らぬ新天地をめざす作家の真っ白な希望をたたえ、後半は異国情緒あふれる物語へと変化してゆきます。旅の途中に描いたスケッチと併せて展示いたします。
童話は、森の中の小さな湖で起こる月夜の不思議な物語「金と銀の魚」など、数ある中から、夢や色彩にあふれる5編を選んで初公開します。
南桂子の詩と童話と、銅版画約50点の展示になります。なつかしく新しい、それぞれの世界をご鑑賞ください。

浜口陽三名品展 生まれ出ずる光 2012年4月3日(火)~5月6日(日)

20世紀を代表する版画家の一人、浜口陽三の名品展を開催します。
浜口陽三(1909-2000)は、戦後いちはやくパリに渡り、銅版画の新しい技法(カラーメゾチント)を開拓しました。その技法を使った作品は、国際版画コンクールで次々とグランプリを受賞し、オリンピックのポスターに使用されたこともあります。
作品の前に立つと、闇の中に、ほんのりとやさしい光が見えてきます。小さな静物画でありながら、地平線の夜明けが重なってくるような壮大なスケールがあります。
本展では、浜口陽三の代表作である「パリの屋根」「くるみ」など珠玉の作品約50点を展示します。

浜口陽三銅版画展 少年の日の夢 2011年12月6日(火)~2012年2月29日(水)

浜口陽三は、1950年代にフランスに渡ってカラーメゾチントという新しい銅版画の技法を編み出し、この技法を用いた作品によって世界的なコンクールで次々と大賞を獲得しました。
見る人がすっと包み込まれるような、静謐さをたたえた作品は今でも世界中に知られています。
冬のコレクション展では、浜口陽三の銅版画を紹介するほか、少年時代の絵画類を展示します。
千葉県銚子市で育った浜口は、「大きな絵より、小さくても真実の絵を描きたい」と小学校の絵の先生に語ったそうです。
現存する絵は、水彩や色鉛筆のドローイングで、題材の多くは身近な静物や風景です。中には大正のモダンな風俗を感じさせるモチーフもあり、後の銅版画に通じるような特色も見出せます。
未来のある少年の目に重ねるようにしてご鑑賞ください。

浜口陽三・石川九楊二人展 -光の消息- 2011年9月1日(木)~11月26日(土)

当館は銅版画家・浜口陽三(1909-2000)の美術館です。この秋の企画展は書家として活躍中の石川九楊(1945年生れ)との二人展が実現しました。

石川氏は5歳で書に出会い18歳で本格的に活躍をはじめてから現在まで、半世紀にわたり書芸術の可能性を拡張し続けています。一見絵画のような作品は「書」の枠に収まらず、見る人に衝撃を与えてきました。
本展では、「新・源氏物語書巻五十五帖」(2008年発表)の連作55点を、3期に分けて全作紹介します。

一方浜口の銅版画技法であるメゾチントはベルソーという道具で銅版の表面に無数の点線を刻む作業― 「目立て」 から始まります。闇の中に光を含んで浮かび上がる造形、浜口のメゾチント作品には悠然たる個性が宿り、現在も世界中の人々を魅了しています。

書と銅版画は全く異なる芸術ですが、和紙に刻み込むように書かれた石川九楊の一点一画(筆蝕)の表現と、銅版に刻み込むことから生み出される浜口陽三の造形は、二人の作家それぞれの卓越した厳しい探求によって決定的なものとなり、目でみながら触覚で感じるような肌合いを持っています。作品に近づき、細部までなぞるようにご鑑賞下さい。二人の作品を同時に見ることによって、ジャンルや時代を越えて創作の根源に探る感覚を呼び覚ますのではないでしょうか。


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