自然界、特に植物を代表する色彩である「緑色」。人々の生活が自然界に支えられていることから、この色は多くの地域・時代の中で繁栄や豊かさを想起させる色として扱われてきました。また現在では、心理的な安定をもたらす色として様々な場面に用いられています。
伝統的な意味合いを持ち、また人間の心理的な部分にも関わるこのような色彩が、浜口作品の中ではどのような表れ方をしているのでしょうか。 それは時に、浮かぶさくらんぼの色として、または背景に潜む「地の色」として。闇の中に隠れ、現れ、浜口は色彩の持つ多様な効果を存分に引き出しています。 また、赤・青・緑といった有彩色だけではなく、むしろ白・黒といった無彩色の世界にその効果はありありと表れています。黒の技法(マニエル・ノワール)と呼ばれることもある技法・メゾチントは、白から黒にかけての幾層もの階調を表現することに優れています。浜口作品の世界では黒はただの黒ではなく、白もただの白ではありません。それは闇として、また物の陰として、そして光として存在しうるだけの効果を発揮しているのです。
本展覧会では「緑色」を焦点に、浜口陽三の銅版画世界をご紹介します。色彩のもつ不思議さを感じ、またメゾチントという表現方法を用いて世界を舞台に活躍した、浜口陽三作品の魅力を再発見して頂ける機会となるでしょう。
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