線は、物語を綴ります。そこに、心に眠るいくつかの気持ちに誘い出されて、柔らかな色が集まります。そうして生まれた世界の中で、小さな鳥や魚などのモチーフは、やさしさに包まれながら私たちの向こうがわを眺めています。
銅版画家・南桂子(1911-2004)は富山県に生まれ、高等女学校時代から絵画や詩作を試み、のちに20世紀を代表する銅版画家となる浜口陽三との出会いをきっかけに、1953年に渡仏、銅版画の世界で作品を作り続けました。制作拠点はパリやサンフランシスコでしたが、南作品は、本の装丁やユニセフのカードを通して、いつも身近なところにありました。最近では高校の国語の教科書に表紙として使われるなど、作品の新しい魅力は発掘され続け、世界中の人々に親しまれています。
この度、春に予定した展覧会を会期延長することになりました。本展では、生命の輝きを感じる作品約60点を、繊細な色から語られるもの、静けさそのものを大切に展示します。浜口陽三の作品10点も併せて紹介します。