浜口陽三について
浜口陽三は、1909年にヤマサ醤油株式会社の先々代の社長、濱口儀兵衛の三男として和歌山県に生まれました。
生家は、1645年以来お醤油造りを続けてきましたが、陽三は家業を離れて東京美術学校(現東京藝術大学)の彫塑科に入学しました。1930年には大学を中退してパリに渡り、油彩、水彩、銅版画など幅広い創作活動を行います。第二次世界大戦により帰国し、戦後の1948年頃から本格的に銅版画の制作を始めます。1953年に再び渡仏し、1955年頃からカラーメゾチントという銅版画技法を独自の解釈から開拓しました。
以来1957年のサンパウロ・ビエンナーレ版画国際部門での最優秀賞受賞をはじめ多くの国際美術展で受賞を重ね、世界を代表する銅版画作家の一人として広く知られるようになりました。1981年にはサンフランシスコに移り住み、それから15年間制作を続け、1996年に帰国、2000年に逝去しました。
高度な技術から生まれる繊細で静謐な作風は、他の追随を許さず、高い評価を獲得しており、エンサイクロペディア・ブリタニカの「メゾチント」の項目では、「カラーメゾチントの新しい版画技法を開拓した作家」と紹介されています。
浜口陽三よりメッセージ
永いフランス、アメリカ生活を終え、1996年に帰国しました。90歳を目前にして、私が持ち帰った作品を常設展示する施設ができました。
この小さな殿堂の完成は、画家として最高の褒美をもらったような喜びでした。
長い間メゾチントという技法に取りくんできた私にとって、どの作品も思い出深くかけがえのないものです。
美術館では私の若い頃から最近の作品までを見ることができるので、
版画を学ぶ多くの若者に見てもらえたら、と思っています。
今は孫のような若い世代の版画家の成長を心から楽しみにしています。
1998年11月
浜口陽三 年譜
1937年
6.5×9.5cm
・ドライポイント
1954年
28.5×28.5cm
・メゾチント
1957年
29.5×34.5cm
・メゾチント
1976年
28.0×32.3cm
・カラーメゾチント
1981年
24.0×55.0cm
・カラーメゾチント
1909年 | 4月5日濱口儀兵衛・恭子の三男として和歌山県に生まれる。 生家は1645年から千葉県銚子市で代々醤油醸造を営み、 曽祖父は稲村の火で知られる濱口梧陵、父がヤマサ醤油の10代目社長であった。 |
1927年 | 東京美術学校(現東京藝術大学美術学部)彫刻科に入学。 |
1930年 | 梅原龍三郎の助言により東京美術学校を中退、フランスに渡る。 |
1937年 | 長谷川三郎、村井正誠、山口薫らとともに自由美術家協会の結成に参加。最初の銅版画「猫」(ドライポイント)を制作。 |
1939年 | 第二次世界大戦のため帰国。 |
1951年 | 日本で初めて、銅版画の個展をフォルム画廊にて開催。 |
1953年 | 再び渡仏。パリに定住。 |
1954年 | 現代日本美術展で佳作賞を受賞。サロン ・ ドートンヌの会員となる。 |
1955年 | この頃からカラーメゾチントを制作。 |
1957年 | 東京国際版画ビエンナーレで東京国立近代美術館賞を受賞。 サンパウロ ・ ビエンナーレで大賞を受賞。 |
1958年 | 毎日美術賞受賞。ルガノ国際版画ビエンナーレ(スイス)で受賞。 |
1960年 | ベニス ・ ビエンナーレの日本代表に選ばれる。 |
1961年 | リュブリアナ国際版画展(ユーゴスラビア)でグランプリを受賞。 |
1966年 | クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)で受賞。 |
1972年 | クラコウ国際版画ビエンナーレで受賞。 |
1977年 | リュブリアナ国際版画展でサラエボ美術アカデミー賞を受賞。 |
1981年 | パリからサンフランシスコに移住。和歌山県文化功労賞を受賞。 |
1982年 | 北カリフォルニア版画大賞展でグランプリを受賞。 |
1983年 | ニューヨークとサンフランシスコで「メゾチントの巨匠 ・ 浜口陽三展」開催。 サンフランシスコ市から「市の鍵」を授与される。 |
1984年 | サラエボ冬季オリンピック大会でオリンピック記念ポスターに「さくらんぼと青い鉢」が採用される。 |
1985年 | 東京 ・ 有楽町アート ・ フォーラムと大阪の国立国際美術館で日本で初めての回顧展を開催。ベルギー王立アカデミーの会員となる。 |
1986年 | 勲三等旭日中綬章を受章。 |
1988年 | サンパウロ美術館、コロンビアのアンティオクィア美術館他で回顧展を開催。 |
1990年 | 東京都庭園美術館で回顧展を開催。 |
1992年 | 西宮市大谷記念美術館で回顧展を開催。 |
1994年 | 北来アート評議会の版画部門最優秀賞を受賞。 武蔵野市民文化会館アルテで「濱口陽三展」を開催。 |
1998年 | 東急百貨店吉祥寺店で「浜口陽三・南桂子二人展」を開催。 |
1999年 | 佐倉市立美術館で「浜口陽三展 ─モノクローム作品を中心として─」を開催。 |
2000年 | 12月25日 逝去 |
2002年 | 「20世紀版画の巨匠 浜口陽三展」が国立国際美術館を中心に全国を巡回。 |
2009年 | 浜口陽三生誕100年展が全国5箇所でそれぞれ開催される。浜口陽三の生誕100年を記念した銅版画の国際コンクールがミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション主催で開催され、浜口陽三生誕100年記念銅版画大賞1名、準大賞2名が表彰される。同時に入選作による展覧会が開催される。 |