イベント情報 | |
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出演 | 版画工房カワラボ! 河原正弘氏 |
日時 | 2024年11月9日(土)14:30~ |
参加費 | 無料(入館料のみ) |
冒頭 Kawalabo! Kawara Printmaking Laboratory! 略称 カワラボ!
のチーフプリンター、河原正弘さんによるトークを紹介します。リトグラフ、銅版画の刷りを専門とする河原さんの刷りを専門とする河原さんの新鮮な視点から、メゾチントの特徴、歴史、そして浜口陽三《ツーペアーズ》1976年の版について話していただきました。版と厳しく向き合う刷り師ならではの話で会場が盛り上がりました。
1(リトグラフとメゾチント) 私はメゾチントの刷りを仕事で受けていません。メゾチントは、極めて曖昧な要素を含む版画技術です。リトグラフでは、インクのつくところとつかないところの2つに分けて刷りますが、それ以上のことをやると、コストがどんどん上がっていきます。さらに四色ではどんどん高くなるし、時間もかかる。 |
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2(メゾチントとマニエル・ノワール) メゾチントという技法が使われた時代は、意外と長いです。1642 年から写真の発明 、1822 年までの約二百年間があった。以降は忘れられて、陽三さんや長谷川潔が復活させたと言われていますが、肖像画という意味では、写真の発明がメゾチントの衰退につながったのかもしれないけど、圧倒的にリトグラフが登場し、カラー印刷のインクと四色分解の精度が上がってくるところで廃れていきました。リトグラフの誕生が1796 年。ここまでの 150 年間ぐらいがメゾチントの時代、その後は凹版印刷の全てがリトグラフに置き換わって淘汰されていくという歴史です。 |
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3(メゾチントの黒について) ここから本題です。工房のスタッフに目立てを、1セットから4セットまで作ってもらいました。ルーレットを使った目立てだから、むしろジーゲンの方法です。ルーレットを2 セットで、結構削れて部分的にグレーになってくる。線を斜めに入れると綺麗で調子が拾いやすい。塗りつぶしたような黒を作っても、白い点々が出てくる。僕はこの、点が認識できるぐらいの効果が美しいなと思っていて。浜口氏が言っていますよね。「真っ黒にはしない」 って。それは意図的で、リトグラフの製版でもそうですけど、全部一面に均等に目立てのようなことをやっていたら非常に時間もかかるし面倒くさいけど、的確なところに的確な点を打ち、ブロックするところは黒くして的確に削る、というのが非常にハマる。 |
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4(浜口の版1) 刷ってみて、こんなに綺麗なんだと。僕が印刷マニアだからだと思うんですけど、この諧調、ハイライトからシャドウが非常に整っていて、とっても繊細な仕事。マニエル・ノワールではないし。それだけ繊細に作ってある版を刷っても、黒いところがあまりない。 70% のグレーぐらいから 80、90、もしくは 98 ぐらいのところに諧調の幅があって、しかも薄いところも繊細に仕上げてあって。こんなに繊細に諧調が整理された版から、刷り重なることによって、わざとちょっとした事故(ミュゼ注:転移不良のような不確実な要素)を起こすことによって、奇跡の諧調が出るんですよ。 |
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5(浜口の版2) テントウムシの足のところはなんか思いっきりニードルで強い筆圧で引っかいてる。拡大できれば、割とはっきりあります。ここの足のライン、ものすごい勢いで刻んでいるので、刷った時にこの線がはっきりあったらいいなって。僕はこういうところがあった方が好きですね。 |
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6(刷り方の違い) 1976 年の浜口作品をスキャニングして色分解すると、オリジナルの版とは、割と違う形が出てきている。当たり前なんですよね。たっぷりとインクを乗せて 4 枚刷るので、ベトベトのインクの上に繊細な黒の調子が乗るわけはない。 |
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(質問:刷りの〝事故〟とは、例えばどういうことを言うのでしょうか?) |