イベント情報 | |
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日時 | 2024年2月3日(土) |
参加費 | 無料(入館料のみ) |
特別ゲスト | 北村薫 氏 |
ワセダミステリ・クラブ主催の読書会、2月3日(土)のテーマは北村薫『ターン』でした。ワセダミステリ・クラブの先輩でもある北村薫先生が特別参加し、会場が盛り上がりました。その一部を紹介します。
~ワセダミステリ・クラブ~
ミステリ・SF・ファンタジー・幻想文学・怪奇小説などを中心とする、早稲田大学公認の総合文芸サークル。1957 年に江戸川乱歩を顧問に迎えて発足し、翌年1958 年より会誌『Phoenix』の発行を始める。北村薫をはじめとする小説家、評論家、編集者を多数輩出している。
特別ゲスト:北村薫氏
実演: 銅版画家 山田ひとみさん
★ワセダミステリ・クラブ時代について (北村薫氏) 当時、喫茶店がたまり場だったので、毎日行きました。ものすごく本を読む先輩ばかりで、田舎から出てくるとこんなに本を読んでいる人がいるのかと、教えられることばかりでした。実は、『中野のお父さん』というシリーズを書いているのですが、なんでも読んでいる人が先輩にいたんですね。この人に聞けば何でも分かるっていう。いろいろな形で今でも影響を受けています。またワセダミステリ・クラブでは作家さんをお招きすることがありまして、都筑道夫先生などがいらした時の印象が非常に強いです。 |
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★時と人の三部作、第二作目『ターン』のメゾチントについて (北村薫氏) 作品にどんな人を主人公にするか、それぞれに物語があります。『ターン』の場合は、神保町を歩いていて美術の店があったので、とんとんと階段をのぼっていったら、そこにあります(館内で特別展示中の)謡口さんの版画があったんです。「へえー」と思って、割と気に入って、興味を持ちまして、その後、時と人シリーズの、まず『スキップ』を書いて、次に『ターン』の時にどういう人を主人公にしよう、と思った時に、やっぱり、「出会い」だったんですね。このメゾチントを描く人を主人公にしたいと。で、その人が、メゾチントがどんなものか、取材をさせてくださいと。それでこの人と連絡を取り合って、実際に謡口さんのところへ取材に行ったのですよね。 (編集者) この謡口さんの絵に出会ったことで、『ターン』の主人公がメゾチントの作家になりました。取材に一緒に謡口さんのお住まいに行きまして、メゾチントについての技法を教えていただいて、北村さんの中に、『ターン』の主人公として、メゾチントを作る版画家、真希さんのイメージがだんだん作り上げられていきました。 |
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★質問者:失われてしまうのに何故創るのだろうとか、あるいは死んでしまうのに何故生きるのだろうとかいう、そういう問いが浮かび上がってくるんじゃないのかなという、そういう読み方をしました。大変面白かったです。 (北村薫氏)そういうことを考えますね。それと同時にまた、同じような形で、書く人間というのは、誰が読むんだろうと、とてもストレスがあります。~私は早稲田で、授業をやっていたときに、学生さんに知ってる歌人の名前を挙げてもらったことがあります。その中に、松平修文を挙げた人がいたんですよ。「なんでこの人を知ってるの?」って言ったら、「そういうアンソロジーみたいなもので見てすごいと思った」と。~誰も読まないかもしれない作品を書く辛さ、自分の作品に値打ちがあるんだろうかと書く辛さ。しかし、表現するべく生まれた人間は、表現をしているし、そうすると、思いがけないところで誰かが見ているということはあるものです。この学生さんは私には全く意外なところでそれを挙げてくれた。そういうことは自分にとっても、励みになりました。で、実はやっぱりその苦しみに対峙しつつ、創作者というのは創作を重ねていくんだなってことを思いましたね。 |
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この他にも会場からは次々と質問が出ました。 ・北村先生の作品は、女性が主人公の作品が多い気がするのですが、それは何か意図していることがありますか? など、話題の尽きない夜でした。『ターン』だけではなく、北村薫先生の創作全般について、さらに書くことについて、時間について、笑いをまじえながら、話はどこまでも広がっていきました。 |