修業時代に出会ったすっぽんのおいしさに衝撃を受け、いまもなお魅了され続けている私が開発したのは「すっぽんの玉〆 フカヒレ乗せ」。鮮度・肉質ともに十分のすっぽんから丹念に出汁をとり、その重厚な旨味を卵でぎゅっと閉じ込めた一皿です。
まずは、本メニューの要となるすっぽんスープづくりから。たっぷりの純米酒と同量の水、爪昆布の中に、捌いたすっぽんを入れて煮ます。純米酒は、すっぽんの雑味をとり、身を柔らかくするほか、コハク酸の香りにすっぽんの旨味を引き立てる効果があります。また、昆布の根本に位置する爪昆布は、ほかの部位に比べて旨味が強いのが特徴。すっぽんの魅力を研ぎ澄まし、引き立てる食材とともに煮込むこと約40分。輝くスープからすっぽん身をとり出し、身から骨を丁寧に外します。
すっぽん身の味付けは、スープと同じく繊細そのもの。酒、みりん、しょうが、自然なコクと香りがすっぽんと相性が良い「ヤマサ特選 有機丸大豆の吟選しょうゆ」を合わせた煮汁の中で、じっくり弱火にかけます。この時、醤油は2度に分けて入れるのがポイント。1度目は火にかける前、2度目は全体が煮立ってきたタイミングで香り付けとして入れてください。このひと手間によりすっぽん身にしみ込んだ醤油の多層的な香りが、後の工程で効いてくるので楽しみにしてください。
すっぽんと並ぶ主役・フカヒレにも、日本料理の手仕事を行きわたらせます。金華ハム、干し貝柱、昆布、にんにくを入れて火にかけ、素材それぞれの旨味をじっくりと抽出します。なかでも、金華ハムの熟成がもたらす独特の旨味は、伝統的な「すっぽんの玉〆」の新たな一面を演出する“贅沢な隠し味”。仕上げに「ヤマサ 鮮度生活 うすくち丸大豆しょうゆ」で上品な風味をまとわせれば、あとは茶碗地の蒸しあがりを待つだけです。
茶碗地は、重厚なすっぽんスープを寄せるために卵黄を多めに配合しています。スチームコンベクションで加熱する10分間で、すっぽん身旨煮から旨味と醤油の芳醇な香りがしみ出し、スープのおいしさと一体化するのです。仕上げにフカヒレ旨煮と、これまたすっぽん出汁が効いた共地飴をたっぷりとかけて完成。季節の彩りを愛でながら、ぜひ温かいうちにお召し上がりください。
「すっぽんの玉〆 フカヒレ乗せ」は、すっぽんの滋味を最大限に引き出そうと模索する日々なくしては開発できませんでした。その道のりで気付いたのが、すっぽんと合わせる副食材・調味料選びの大切さです。醤油ひとつをとっても、銘柄ごとの特徴を知ることで、食材を活かす最適解がおのずと見えてきます。これからの料理界を担う皆さんには、料理のいろはを学ぶ道中を楽しみながら、いつの日か自分だけの一皿にたどり着いてほしいと思っています。
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