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【匠の皿 vol.8】「ゆで豚チャーシューチャーハン」 szechwan restaurant陳 料理長 井上 和豊 氏

 
私が専門としている四川料理は、麻婆豆腐に代表される山椒のしびれる辛さを特徴としています。食欲をかきたてる刺激的な風味に注目が集まりがちですが、旨味や香りを重ね合わせた繊細な味わいも魅力のひとつ。そのうえで、醤油は欠かせない調味料です。そこで、四川料理に日本の伝統調味料が息づいていることを感じていただけるよう開発したメニューが「ゆで豚チャーシューチャーハン」です。
 


 
メイン具材のチャーシューは、醤油の塩味と香味野菜の自然な甘味が調和した、そのままでもおいしい本格派。チャーハンの味わいの決め手となり、ごろっとした見た目でインパクトを与える重要な役どころです。チャーシューは漢字で“焼豚”と表すように焼いて加熱するのが一般的ですが、今回は「ゆで豚」を使いました。すでに焼き上げている焼豚をチャーハンの具材としてさらに炒めた場合、手際が悪いと香ばしさを通り越して焦げた香りが生まれてしまいます。そのため、お湯の中で時間をかけて火を通した後、漬け汁に漬けるやさしい味わいのゆで豚を使い、具材それぞれの持ち味がしっかりと感じられる繊細なチャーハンを目指しました。
 

 
ここで、中華料理店と家庭でチャーハンをつくる際の大きな違いを紹介します。それは「ねぎ油」の存在です。つくり方は簡単で、ラードにねぎとしょうがを入れて高温になるまでじっくり加熱するだけ。ねぎの香ばしさが奥行きのあるおいしさを生み出しますので、チャーハンはもちろん、さまざまな中華料理の炒め油としても活用できます。
 

 
おいしいチャーハンの条件として、「パラパラとした食感」を挙げる人は多いのではないでしょうか。口の中でほろりとほぐれる食感に仕上げるためのコツは2つあります。ひとつは、温かいご飯と溶き卵をボウルでしっかり馴染ませてから炒めることです。ご飯一粒一粒を卵でコーティングすることでほぐれやすくなり、炒めることでふわりとした食感が生まれます。もうひとつは、強火で一気に炒めること。なお、鍋は常に振り続け、具材に火が通り過ぎないように気をつけてください。チャーシューから溶け出す旨味と醤油の香りを、スピーディーかつ丹念にご飯にまとわせることで、本格的なチャーハンの食感と味わいにグッと近づきます。
 

 
また、具材はチャーシューのほか、えび、いか、かにといった魚介類、旨味のある椎茸などの彩り食材を組み合わせています。これらの個性豊かな具材をひとつにまとめるのが、仕上げに鍋肌で香りを立たせる「醤油」です。口当たりの良い塩味と、やさしい甘味をもつヤマサ醤油は、「漬けて良し、火を通して良し」とまさに万能。そんな包容力があるヤマサ醤油を使うからこそ、色んな具材を入れてみるのも面白いと思います。個人的には、独特の香りと食感がアクセントになる漬け物がおすすめです。「定番メニューのはずなのに、いつもより格段においしい」。そんな“静かな感動”を生み出す四川料理の技と、ヤマサ醤油のポテンシャルを、ぜひ食卓で体感してください。
 
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