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注目店のキラーメニュー 創和堂

 
恵比寿駅から少し離れた閑静なエリアに、その界隈の食通を魅了する「創和堂」はあります。店内に入ると、奥行きのあるメインフロアが目の前に広がります。木のカウンターから漂うあたたかみと、都会的な洗練された雰囲気が同居する、非日常を感じさせる空間です。
 

 
お酒を交わす晩餐を彩る
ひと手間、ひと捻りを添えた日本料理

 
初めの一品として味わいたいのが「お造り」です。皿に並ぶメジマグロ、サワラ、アオリイカ、ヒラメには、食材それぞれの特徴にスポットライトを当てて味付けされています。メジマグロには海苔とニラを使った醤油ソース、サワラには紫蘇の実の醤油漬けなど、「お造り」にもひと捻りを加えるのが“創和堂流”です。料理長の前田亮さんは、開発背景について「“お酒がよりおいしくなるお造り”というコンセプトで味付けを考案しました」と語ります。メジマグロは、磯のふくよかな香りとニラの食欲をそそる香りを合わせることで、単調になりがちな「お造り」に抑揚が生まれます。後をひくおいしさは、日本酒はもちろん、旨味に芯があるすっきり系の赤ワインともぴったりです。
 

 
また、同店は会食シーンで利用されることが多く、「小皿の醤油につける従来の『お造り』では、お客様の箸が進みにくいという懸念がありました」と、前田さんはメニュー開発のもうひとつの背景を説明します。あらかじめ味付けを施す、というお客様を想ったひと手間からも、料理への並々ならぬこだわりが伝わってきます。
 

 
日本料理の伝統に軸足を置きつつ、他のお店にはない個性を打ち出していく姿勢は、「土鍋ごはん」に色濃く反映されています。〆のご飯ものとして定着するキラーメニューは、まずは視覚で楽しみます。蓋を開けた瞬間、湯気とともに四季折々の食材が姿を現すさまはインパクト抜群です。「土鍋ご飯」には一年を通して提供する定番メニューもありますが、常連の皆さんの楽しみになっているのが“期間限定の組み合わせ”です。この日、夏に先駆けて紹介いただいたメニューは「土鍋ご飯 鰻の山椒煮と新ごぼう」。かつての修行先で習得した「鰻の山椒煮」を同店の看板メニューに取り入れたらどうなるか、という前田さんの挑戦意欲が込められています。
 

 
時間をかけて炊き上げた鰻はふっくらとした食感で、一口ほおばると、鰻の濃厚な旨味と「ヤマサしょうゆ」が香る甘辛い煮汁がしみ出てきます。さらに、爽やかな山椒の香りと新ごぼうの歯切れの良さが食欲をかき立てます。素材そのものの良さ、優れた調理技術もさることながら、味の決め手となる「ヤマサしょうゆ」を加えることにより、「鰻や出汁の風味を際立たせ、食べ進めるごとに食材それぞれの良さをしみじみと感じることができます」と前田さんは話します。
 

 
斬新でありながらどこか懐かしい
琴線に触れるメニュー開発の心得

 
「創和堂」では日本料理として新しいかたちを提案していますが、その根底には、日本料理の基本である季節感、日常的に美食に触れているお客様が求めるおいしさ、そして驚きや発見を与える同店ならではの個性、という3大要素を突き詰めるポリシーがあります。「目標とするのは、おもしろい食材の組み合わせなのに、どこか懐かしさを感じさせる日本料理です。奇をてらい過ぎると、創作に偏った日本料理になってしまいます。食材の組み合わせや調理方法の妙で、食に精通するお客様に満足いただくことを目指しています」と話す前田さん。王道でありながら、斬新さを感じさせる逸品は、料理人たちの日々の創意工夫と向上心により生まれています。
 

 
美食家たちをひきつける特別な場所は
“料理”と“人”によりつくられる

 
キラーメニューをはじめとした料理が評判を呼び、連日多くの食通たちでにぎわう店内。お酒を片手に、思い思いに美食を楽しむ風景の陰には、料理人・スタッフのきめ細かな心配りがあります。お客様の様子をつぶさに確認し、声にならない要望を汲み取り、さりげないサービスで贅沢な時間を演出します。こうした小さな積み重ねは、常連様からの「すごく賑わっているのに、居心地がいいよね」という、この上ない言葉として実を結んでいます。料理の魅力と心からのおもてなしが映える「創和堂」は、食を愛する人々にとって、心から安らげる場所であり続けるでしょう。
 

料理長 前田亮氏
 
 
【店舗紹介】
■創和堂
 

 
〒150-0012
東京都渋谷区広尾1-12–15 リバーサイドビル1階
17:00~23:00(L.O.22:00)
※日曜定休
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、営業時間が変更になる場合がございます。詳しくは店舗へお問い合わせください。
https://sakai-shokai.jp/sowado/