都内屈指の“呑兵衛のまち”として知られる中野。さまざまな料理ジャンルの実力派店舗がそろう激戦区で、豚モツの新境地を切り拓く料理で人気を集めているのが「久遠の空」です。
中野駅から少し離れた住宅街に店を構え、ドアを開けると多種多様な植物がお出迎え。木のテーブルやビビッドカラーの椅子などのインテリアと相まって、店内にはオリエンタルな雰囲気が漂います。「豚モツはもちろんですが、植物も大好きなんです」と話すのはオーナーの遠山隆昌さん。これまで12店舗の飲食店を運営してきた遠山さんが、料理人人生の集大成として自身のこだわりを詰め込みました。
豚モツの新たな一面を引き出す
ハーブという名脇役
豚モツ料理といえば串焼きやモツ煮込みなどのシンプルな料理が代表的ですが、「久遠の空」のメニューには和食や洋食といったジャンルの垣根を越えた個性が息づいています。それを象徴するメニューが「豚カシラ肉と岩塩を効かせたラベンダーアイス添え」です。
メニュー開発の背景について「醤油をベースにした味付けで豚カシラ肉の風味を活かしつつ、脂がしっかり落ちるよう塊肉の状態でしっかりと火を通し、ゼラチン質ならではの歯切れの良い食感を引き出しました。ただ、それだけでは面白味に欠けます。そこで、ソースの代わりにラベンダーが薫るアイスを開発しました」と遠山さん。
こんがりと焼き上げたカシラ肉にじわりと溶け出すアイスを付けて頬ばると、多彩な風味が融合した上品かつ力強い味わいが口の中に広がります。「モツと一言に言っても、豚一頭から特徴が異なるさまざまなモツがとれます。また、ラベンダーをはじめとしたハーブも種類豊富。『豚モツ×ハーブ』という組み合わせには、新しい味わいを生み出す“無限の可能性”が秘められているんです」と遠山さんは笑顔を浮かべます。
手間を惜しまず、創作を楽しみ、
人生・価値観が変わる瞬間を届ける
続けて遠山さんは、豚モツ料理の真髄についても話します。「豚モツは自分の目で品質を確認し、納得したものを仕入れています。また、豚モツの下処理も丁寧に行うのが信条。おいしい料理をつくるためなら手間と時間を惜しみません」。料理人として“噓をつきたくない”と語る遠山さんの愚直な姿勢が、ここでしか味わえない逸品を生み出しています。「『時間をかける』という意味では、醤油づくりも同じではないでしょうか。「ヤマサしょうゆ」は美しい色合いで、モツ焼きのタレにした時に甘味とのバランスが非常に良い。私自身が15年前から納得して使い続けているということからも、ヤマサ醤油が変わりなく丁寧な醤油づくりにこだわっていることがよく分かります」と遠山さんは語ります。
豚モツという素材を前にして、未だ尽きることのない遠山さんの創作意欲。その根源には、遠山さんが追い求める“ある瞬間”が関係していました。「内臓系が苦手なお客さまにも来店いただいており、『これ、豚モツだったの!?』と驚かれることもしばしば。そんな“人生や価値観が変わる瞬間”に立ち会えることが幸せなんです。だからこそ、豚モツの既成概念がひっくり返るようなメニュー開発に終わりはありません」。遠山さんの豚モツへのこだわりと料理人としての感性が混じり合う「久遠の空」は、これからも豚モツの新境地が生まれる一丁目一番地で在り続けます。
炭火の香ばしさとハーブが薫る
彩り豊かな逸品
メニュー名:豚カシラ肉と岩塩を効かせたラベンダーアイス添え
豚カシラ肉のなかでも肩寄りのゼラチンを多く含む部位を使用。豚カシラ肉の食感やラベンダーアイスとの温度差、添え物のハーブとの組み合わせなど、一皿に多彩な食の楽しさが詰まっています。
①ブロック状の豚カシラ肉に日本酒とおろしにんにくを塗り炭火で焼きます。焼き具合を確認しながら3~5分の間隔でひっくり返し、余分な脂を落としつつ火を通していきます。
②豚カシラ肉の表面全体がこんがりと焼き上がったら、タレにくぐらせて2分ほど焼きます。この工程を4回ほど繰り返してください。
③皿に1cm幅にカットした豚カシラ肉、プルピエ、パープルバジル、グリーンオキザリスを盛り付け、岩塩を振りかけます。仕上げにラベンダーアイス、ネギ、グリーンフェンネルを添えて完成です。
【店舗紹介】
久遠の空
〒164-0001
東京都中野区中野3-48-14
営業時間 18:00~23:00(L.O.21:30、ドリンクL.O.22:30)
※完全予約制
※不定休
https://r.gnavi.co.jp/ph0axfvg0000/
【遠山隆昌氏プロフィール】
1970年生まれ。16歳の時に割烹料理の世界に入り、その後洋食、串焼き、創作ダイニング、天麩羅、バーなど数多の飲食店で研鑽を積み、2004年に株式会社久遠を創業。12店舗・10業態の運営を経て、2008年に完全予約制の「久遠の空」を開店する。豚一頭丸ごと分のさまざまな内臓を堪能できるコースをはじめ、数量限定の希少部位も楽しめる串焼きは、自身がセレクトしたアルコールとの相性を考慮した繊細な味付けが特徴。豚モツ料理の伝統と革新が同居するメニューを通じて、今宵も世の食通たちを魅了している。
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