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注目店のキラーメニュー かにかとう

 
国内外から訪れる多くの観光客でにぎわう浅草。しかし、吾妻橋のたもとから墨田川沿いに伸びる通りには、別の空間に入り込んでしまったような静けさが漂います。この通りに2023年4月、「かにかとう」はオープンしました。扉を開け、雪のトンネルのような純白のアプローチを進むと、浮世を離れて未知なる食の世界に入っていくような感覚に。ここから既に、「かにかとう」のプレゼンテーションは始まっているのです。
 

 
革新的な料理の背景には
ロジカルな思考がある

 
料理を前にすると、多くのお客様は「美味しそう」「きれい」などといった感想を口にするでしょう。しかし、その言葉の源となる感情は、料理が提供された瞬間に動かされているもの。その一瞬が勝負と岡田さんは心得ています。だからこそ、料理には料理人の感性だけでは満たされない部分があると考え、メニュー開発やコースの組み立て、提供の際の演出やサービスについて、徹底的に考察を重ねます。
 

 
お客様の目の前で調理から盛りつけまでを行うことで、その音や香り、熱量を感じてもらい、配色や配置、器にこだわることで料理を目でも堪能してもらいます。堅苦しい雰囲気では食事を心から楽しめないため、ゆったりとくつろげるおもてなしにも注力。このような五感を刺激する食体験の実現に向けて、哲学やデザイン論、色彩学といったありとあらゆる知識をフル活用し、スタッフとのブレインストーミングやマインドマップといった手法も取り入れながら、「かにかとう」ならではの革新的かつ独創的な料理とホッとできるサービスを、ロジカルに構築しています。
 

 
新たな蟹料理を目指して
磨き上げた香箱蟹メニュー

 
水産会社を母体とし、年間を通じて全国から高品質の蟹を仕入れている「かにかとう」。日本のお客様だけでなく海外からのお客様にも、蟹は人気の食材です。しかし、日本の蟹料理はバリエーションが限られ、専門店といえども定番メニューが主流なのが実情。岡田さんは「蟹料理にはむしろ可能性があるととらえ、現状に満足せず、自分が作る蟹料理で驚きや喜びを感じていただくには何をすればよいのかを常に考えてチャレンジしています」と話します。
 

 
長島氏から学んだ日本料理の精神と技を基本に、これまでのキャリアで得たものや日々の中でのひらめき、新しい知見を、蟹料理へと昇華させている岡田さん。その1つとして誕生したのが、今回キラーメニューとして紹介する「香箱蟹キャビアの冷燻」です。蟹の中でも熱心なファンが多い香箱蟹。その期待を裏切らず、想像を超えたメニューにしたいという想いを込めた逸品です。
 
蟹の甲羅をコーティングして作ったオリジナルの器に適度に火を通した身、内子、外子を詰め、その上にゆでて氷水で急冷した脚を美しく並べます。たっぷりと添えるのはキャビア。トライアンドエラーを重ねて相性を見極めた、蟹と高級食材の極上の組み合わせです。金箔を散らしたら、仕上げにガラスのカバーで桜のチップの煙と共に閉じ込めて、優しくおだやかな香りをまとわせます。お客様自身がゆっくりと回すようにしながらカバーを外すと、雲海のような景色の中に料理が姿を見せるという仕掛け。この演出と、燻香とフレッシュな素材の味が織りなすストーリーが相まって、お店が目指す感動を呼ぶ食体験が完成します。
 

 
また、季節などにより「香箱蟹キャビアの冷燻」に代わって登場するのが「香箱蟹冷燻 柚子ジュレと共に」です。こちらはキャビアではなく、蟹酢から着想した、柚子の皮で香りづけした爽やかなジュレをあしらいます。仕上げはやはり桜のチップでの冷燻です。
 

 
このお店のコース料理は、最初に出汁を飲んでもらうことで、舌にある味を感じる器官の味蕾(みらい)の感覚を、まさに花の蕾(つぼみ)のように開かせることからスタートします。出汁に続いて先付として登場するのが、「香箱蟹キャビアの冷燻」または「香箱蟹冷燻 柚子ジュレと共に」です。「香箱蟹キャビアの冷燻」の味つけは、蟹の身や脚を下茹でした際の塩分とキャビアの塩気、そして「ヤマサしょうゆ」と、いたってシンプル。「香箱蟹冷燻 柚子ジュレと共に」のジュレには、季節の柑橘類の絞り汁と出汁、みりん、「ヤマサしょうゆ」が使用されています。「ヤマサしょうゆ」を選んだ理由について、岡田さんは「コクと旨味があって、まろやか。使うことで料理の味に角が立たないところが、コース料理の幕開けにはぴったりなんです」と明かしてくださいました。
 
「また来たい」「人に話したい」
そう思わせる食体験を提供したい

 
コロナ禍で飲食業が苦戦を強いられる中、今後自分の強みになるのは何かを考えたという岡田さん。その中で、料理に加えて、ビジネス的なものの見方や考え方、そして語学力の重要性に気づき、力を蓄えていきました。現在では、海外からのお客様を対象にしたかっぱ橋道具街への買い出しツアーや、寿司を握るプライベートなワークショップも開催。今後も海外市場を視野に、体験を通じて和食文化を広めていく活動に積極的に取り組んでいこうと考えています。
 

 
「かにかとう」の窓からは、屋形船が行き交う墨田川や吾妻橋が一望でき、季節ごとに日本らしい風情あふれる景色が楽しめます。それはお客様だけでなく岡田さんの心も癒やし、思考をクリアにしてくれるのだとか。「観光客の多いエリアなので、このお店の料理がお客様の旅の思い出として記憶に残るとうれしいです。食は体験。食べてよかった、来てよかったと思ってもらえるような、ワクワクするような瞬間や心落ち着く場を、共に働くスタッフの力を借りながら、今後も作り続けていきたいです」。
 
【店舗紹介】
かにかとう

 

 
〒111-0034
東京都台東区雷門2-1-8
13:00~23:00
※水・日曜日定休
https://kanikato.jp/