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【ひしほがたり】第十一話:外食ならではの価値~選ばれ続ける店であるために~

 
―コロナ禍における外食産業の変化について、おふたりはどのように感じられましたか?
 
早川様:感染対策として席数制限を実施しましたが、その影響を抜きにしてもお客様が外食する回数やお酒を飲む機会は減っていると感じます。
 
岩田様:新しい生活様式の浸透により、健康志向が高まっているのかもしれません。当店ではノンアルコールドリンクを充実させることで、より幅広いニーズにお応えしました。また、お客様との接触回数を削減できるよう、前菜と椀物を一膳に集約するといった、新しい会席料理づくりにも取り組みました。
 
早川様:私もコロナ禍をきっかけにコース料理を刷新しました。席数制限があるなかでも、しっかりと売上を積み重ねなければなりません。そこで、料金単価を再考するとともに、一から食材の見直しを行いました。イタリアンという特性から輸入食材を多く使用していましたが、国産食材の比重を高め、それらの持ち味を引き出すことで料理全体のクオリティ向上を図りました。おかげさまでお客様からは好評をいただいています。
 
岩田様:外食店は世の中にたくさんあります。そのなかから選ばれ続けるには、お客様にご満足いただくだけでなく“記憶に残る”ことが大事だと思います。私が得意とする“想咲会席”は、事前にお客様より頂戴した思い出や願いなどをテーマにして作り上げていきます。料理だけでなく、店舗の内装も活用してテーマを表現することもあります。おいしさだけではなく、食の空間を華やかにして、そのひとときを強く印象づける“エンターテインメント性”は不可欠です。
 

~ロイヤルパークホテル「源氏香」過去の演出より~
 
―おふたりの“エンターテインメント性”を体現するメニューについて教えてください。
 
岩田様:今回開発した「旬の鮮魚さらだ仕立 源氏香醤油を添えて」は、薄氷の蓋に醤油ドレッシングをかけて溶かす演出が見どころです。これはスイーツのチョコレートドームから着想を得て考案しました。異なるジャンルからも技法を取り入れながら、常に驚きと感動のある日本料理を探し求めています。
 

 
早川様:最近は五感を刺激するメニュー開発をより意識するようになりました。特に、お客様の目の前で仕上げるチーズリゾットは好評で、今回はさらに贅沢感のある「トリュフ卵かけごはん『T.T.K.G』~イタリアンテイストで~」へと進化させました。薄暗い店内で、パルミジャーノチーズの塊から炎をあげるパフォーマンスは、外食だからこそできる演出です。
 

 
―今後の外食産業の見通しや、おふたりの目標についてお聞かせください。
 
早川様:まだまだ先行きが見えないため、「外食頻度は増えていくはず」と楽観的になれないのが正直なところです。ただ、お客様と接していると、限られた外食機会だからこそ、思い切って贅沢しようと考えている方は多いように感じます。その期待に応えるためにも、レストランならではの“非日常感”を、料理や演出、サービスなどで提供していきたいです。それを実践するうえでの心得を、岩田さんからぜひアドバイスいただければ幸いです。
 
岩田様:そうですね。こうしたご時世をふまえると、お客様に外食を心の底から楽しんでいただくためには、まず安心いただける場づくりは絶対条件です。料理人としては制約があるなかの仕事になりますが、そこで問われるのが“創造力”です。常日頃から、料理だけでなくアートや芸能など様々な世界に目を向けて、情報を貪欲にインプットすることが、お客様の予想を超えるエンターテインメントにつながりますよ。
 
早川様:ありがとうございます。お客様を常に楽しませようとする岩田さんの姿勢を見習いながら、私だからこそ提供できる食体験を突き詰めていきたいと思います。
 

 
 
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【岩田 好輝氏プロフィール】
ロイヤルパークホテル「源氏香」
料理長
 

 
1963年生まれ、愛知県出身。
15歳で日本料理の世界に入り、名古屋、東京、横浜の日本料理店・割烹料理店で研鑽を積む。1989年に活躍の場を「ロイヤルパークホテル」に移し、全国各地の系列施設で腕を振るう。2001年には「在米日本国大使館」に公邸料理人として出向し、2014年から現職。世界各国からの来訪者をもてなす、日本料理の伝道師として活躍を続けている。
 
■ロイヤルパークホテル「源氏香」
 

 
〒103-8520
東京都中央区日本橋蛎殻町2-1-1 ロイヤルパークホテル 5階
【月~金】
11:30~14:30(L.O.14:00)
17:30~21:00(L.O.20:00)
【土・日・祝】
11:30~15:00(L.O.14:30)
17:30~21:00(L.O.20:00)
https://www.rph.co.jp/restaurants/genjikoh/
 
 
【早川 光氏プロフィール】
XEX TOKYO Salvatore Cuomo Bros.
料理長
 

 
1985年生まれ、秋田県出身。
高校卒業後、「ワイズテーブルコーポレーション」に入社し料理人としてのキャリアをスタートさせる。日本料理店やフレンチレストランでの経験を経て、イタリアンシェフを志す。現職に就いて以降も、「RED U-35」やイタリア料理コンテスト「Premio ACCI」に精力的に参加するなど、自分らしいイタリア料理像を追求している。
 
主な受賞歴
RED U-35 2019、2021 ブロンズエッグ
 
■XEX TOKYO Salvatore Cuomo Bros.
 

 
〒100-6701
東京都千代田区丸の内1-9-1 大丸東京 13階
【月~金】
11:00~16:00(L.O.15:00)
17:30~24:00(L.O.コース22:00、アラカルト23:00)
【土・日・祝】
11:00~16:00(L.O.15:00)
17:00~24:00(L.O.コース22:00、アラカルト23:00)
http://www.xexgroup.jp/tokyo