「鮎のポワレ 醤油麹と肝のソース」は、“清流の女王”とも呼ばれる日本の伝統魚「鮎」の魅力を余すところなく引き出したオリジナルメニューです。私がフランス料理人を志すきっかけとなったポワレの技法と、研鑽の日々で磨いた感性を、この一皿に注ぎ込みました。
今回のメニュー開発で試みたのが、フランス料理に日本料理のエッセンスを取り入れることです。異なる料理ジャンルをつなぐのが、特製の醤油麹。10日間寝かせた醤油麹は、発酵ならではの深い旨味があり、ハーブが爽やかに香ります。「ヤマサ重ね仕込しょうゆ 本懐石」は、「これぞ醤油!」という豊かな香りとともにしっかりと塩味が感じられる味わいで、ハーブと合わせてもいい味を出します。この“和洋折衷”の醤油麹で、鮎のおいしさを演出しました。
鮎は、身、中骨、肝に分けます。鮎の風味を活かすために大事なのは“適度な生感”です。調理する際、身と肝は加熱し過ぎないよう意識しましょう。
肝は、醤油麹とタプナードと混ぜ合わせて「肝のタプナードソース」にします。“ほろ苦い”肝ですが、実は旨味もしっかりあるんです。その旨味は、オリーブオイルで丁寧に火を入れる前工程で引き出されます。醤油麹とタプナードの割合は、塩味の加減を気にしながらお好みで。タプナードには、アンチョビの代わりに日本伝統の魚醤「いしる」を使うのも面白いと思います。
鮎の身には塩を振り、皮目に強力粉を振ってオリーブオイルでポワレにします。焼き加減のイメージは、皮目はパリッと、身はフワッと。オリーブオイルが少ないと焦げやすくなるので、身と皮のそれぞれにしっかりといきわたる量に調整してください。
付け合わせの揚げ茄子は、「ヤマサ重ね仕込しょうゆ 本懐石」で塩味と香りをつけたブイヨンに浸します。茄子は夏から秋にかけて旬を迎えるので、鮎との相性もぴったりです。鮎のポワレと揚げ茄子、鮎の中骨を素揚げした骨せんべいを重ね、肝のタプナードソースとハーブを盛り付ければ完成です。
今回は鮎を使いましたが、サンマやイワシなど、肝に存在感のある魚でもアレンジできます。普段何気なく食べたり調理したりしている魚でも、味、香り、食感、それぞれに固有の魅力があります。フランス料理人として私が大事にしているのは、食材の光る要素を見つけ出し、技法と感性を駆使して食べる人に伝えることです。そんな私なりの意気込みを、「鮎のポワレ 醤油麹と肝のソース」のおいしさとともに感じていただければ幸いです。
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