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【ひしほがたり】第二話:減塩醤油の可能性

 
―今回は「減塩醤油」をテーマにお話いただきます。実際に減塩醤油を使用してみての感想はいかがでしょうか?
 
盛山様:ニューヨークでも醤油は日常的に使う調味料であり、現在のお店でも4種類の醤油を使い分けていますが、減塩醤油については未知の存在でした。味見してみて率直に思ったのは「酸味」が特徴だということ。これは新しい発見でした。
 
濵邉様:塩味は抑えめでありながら、醤油本来の香りはそのままですね。四川料理に用いる調味料は塩味が強いものが多く、その中で減塩醤油は「香りが際立つ調味料」として用途はあると思います。
 

 
―日本料理と四川料理において、醤油は要となる調味料のひとつです。減塩醤油とそれぞれの料理・食材との相性はいかがでしょうか?
 
濵邉様:元々醤油は中国にはない調味料でしたが、いまや日本の四川料理で醤油を使わないメニューは少ないと思います。塩味を加えるほか、香りや色味をつける際に醤油を使います。ただ、醤油のしっかりとした塩味を考慮して数滴しか加えられないメニューがあるのもたしか。減塩醤油なら塩味の制約を取り払い、多めに加えてより醤油の香りを立たせることができます。実際、エビチリ冷やし麺のソースに減塩醤油を入れたら新しい味わいでとてもよかったので、今年はメニューに採用しました。赤坂四川飯店に入店して以来、師匠からヤマサ醤油の安定したおいしさを教えられてきたので、料理のバランスを崩すことなく、ヤマサ醤油本来の芳醇な香りをアクセントとして加えられるのが減塩醤油の魅力だと思います。
 

 
盛山様:濵邉さんの言うとおり、減塩醤油は「ここぞ!」という場面でも活躍できる調味料ですね。日本料理では、料理の味を締める役割としてカボスやスダチといった柑橘類を使うことが多いのですが、酸味が特徴の減塩醤油には異なる趣きがあります。もちろん醤油単体としての香りも優れているので、私の中では料理を仕上げる際の新たな選択肢に加わりました。
 

 
―日本料理に不可欠な要素といえば「だし」ですが、減塩醤油を合わせることによる違いはありましたか?
 
盛山様:驚いたことに、濃口醤油や淡口醤油と比べてだし全体がシャープな味わいになり、香りも引き立ちました。だしの香りを引き立てつつ、酸味で料理全体を締める。「だし」「締め」という日本料理における核との高い融和性も、いままでにない調味料としてのポテンシャルを示しています。
 

 
濵邉様:たしかに、既存料理の新たな一面を見せてくれるという点でも、減塩醤油と四川料理との相性は良いですね。四川料理の魅力を一言で表すならば、シンプルなようで奥行きのある味わい。味わいにある種の“複雑さ”をもたらす新たな存在として、減塩醤油は私の探究心を刺激してくれました。
 
―最後に、減塩醤油が今後どのように活用されていくか、その可能性について教えてください。
 
盛山様:私自身が酸味を特徴として感じたように、料理人によって受け取る減塩醤油の印象はさまざまだと思います。つまりは、印象に応じた十人十色の活用法があるということ。だからこそ、料理人の皆さんにはぜひ減塩醤油を一度味わっていただき、新たなメニュー開発につながるインスピレーションを得てほしいです。
 

 
濵邉様:店では長年にわたり同じ銘柄の醤油を使い続けてきましたが、調味料ひとつで料理の味わいががらっと変わる「使い分けの妙」を、減塩醤油はあらためて教えてくれました。辛味やコクのある主菜や優しい味わいの前菜などバリエーション豊富な四川料理においても、目標とする味わいに応じて醤油を使い分ける時代がきた、そう感じました。
 
 
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【盛山 貴行氏プロフィール】
粲 sun 総料理長
 

 
1981年生まれ 東京都出身。
2000年より都内日本料理店で下積みを経験後、26 歳の時に渡米。
New York の日本料理店 [ 饗屋 ]で研鑽をつむ。
数々の有名店を経て、2015年 [ 東京 金蔦 ] (六本木 銀座)、
2018年 [ 粲 sun ]の総料理長に就任。
和の経験を活かしたスタイルでレストランメニューの構築や、
国内外でのイベント、料理監修等で活躍。
 
■粲 sun
 

 
〒106-0032
東京都港区六本木4-10-3 第V大栄ビル7F
月~土 18:00~23:30 (L.O.22:30)
※日曜定休
https://sun-since2018.jp/
https://r.gnavi.co.jp/gah9vgxk0000/
 
 
【濵邉 一樹氏プロフィール】
赤坂 四川飯店 調理係長
 

 
1987年生まれ 大阪府出身。
2003年 辻調理師専門学校卒業後、16歳で赤坂 四川飯店に入社
2010年 青年調理士コンクール畜禽熱菜部門で農林水産大臣賞金賞を受賞
2012年 中国料理世界大会に日本代表として出場
前菜部門で金賞など多数のコンクールで受賞しており、
2019年に赤坂 四川飯店の調理係長に就任。
 
■赤坂 四川飯店
 

 
〒102-0093
東京都千代田区平河町2-5-5 全国旅館会館ビル5・6F
ランチ 11:30~15:00(L.O.14:00)
ディナー 17:00~22:00 (L.O.21:00)
※年末年始のみお休み
https://www.sisen.jp/
https://r.gnavi.co.jp/g176400/