1997年に誕生して以来、
ロングセラーのヤマサ「昆布つゆ」。
その開発のキーパーソンとしてたずさわった
マーケティング部の藤村功部長に
思いをおうかがいしました。
「昆布つゆ」の誕生を語るには、なんといっても「昆布しょうゆ」の存在ははずせません。
「昆布しょうゆ」は、1990年頃、北海道の昆布漁師の奥さんたちの間で「昆布の切れ端をしょうゆに入れておくと旨みが効いてまろやかでおいしい」というのが口コミで広がり、市販で「昆布しょうゆ」という、醤油に少し昆布だしを加えた商品が出た途端に北海道で大ヒット!
そしてわずか数年で北海道では”しょうゆといえば「昆布しょうゆ」”と言われる程になっていました。
そこでヤマサの札幌営業所スタッフから「ヤマサでも、昆布しょうゆをだしてみては?」という声があがり、94年に「ヤマサ北海道昆布しょうゆ」という商品を発売しました。
一方、めんつゆも「めん」用途以外に、煮物などのお料理に使われるご家庭も増えていて、まさしくしょうゆ代わりに使われるようになりつつあり、しょうゆメーカーにとっても大事な商品でした。
そこで、社長が、北海道で売れている「昆布しょうゆ」にヒントを得て「昆布だし」をもっと効かせたつゆに仕上げれば、「めんつゆ」から「煮物」まで幅広い用途にマッチするのではないか?と考え、「昆布つゆ」の開発の際、コンセプトのベースにするよう示唆されました。
もう少し詳しく言いますと、その当時のめんつゆの味作りは、かつおの香りをしっかり効かせることで「だしが効いてる」感をだすものが多くなっていましたが、社長はそれを好まず、逆にかつおの香りが強すぎると料理をした時に素材自体の香りを邪魔してしまうのではないかと考えた訳です。
わかりやすい例を上げれば、例えば「マグロの漬け丼」。かつおの香りがプンプンするマグロは、やはり変ですよね。
社長から「昆布つゆ」の開発を指示された時、最初は「昆布だしがしっかり効いたつゆを作る」と理解し試作をした訳ですが、これが海藻臭くておいしく無かったんです(笑) 当然社長に試食してもらったところ渋い顔をされ、「私のイメージである、昆布の”まろやかさ”と”ヘルシーさ”を体現したつゆを作って欲しい」と戻されました。
そこで「なるほど!」と思って出来上がったのが、今の味です。もちろんすんなりとは行かずに、味作りを担当したスタッフは相当苦労したようです。確か試作品数は100を超えた記憶があります。
「昆布つゆ」にもかつおは使っていますが、あくまで脇役。そのために、「かつおだし」の味はしっかりしているが、かつおの香りがしないかつお節を探しだすことから始まり、ついに主役の昆布のまろやかさが前面にでるようになりました。
こうして、めんつゆとしてもおいしく、いろいろなお料理にもよく合う「昆布つゆ」が1997年に誕生した訳です。
さて、商品もできあがり、今度は世の中のみなさんに知って、使ってもらうためにどんなCMがいいのか考えました。
調査をしたところ、主婦の方々より「コマーシャルタイムは雑用をするためにテレビから目を離すことが多い時間」という話を聞き、それであれば視覚的では無く耳で印象付けようと考えました。
そうして生まれたのがご存じ、芦屋雁之助さんの「こんぶこんぶ昆布つゆ〜♪」の歌です。
またCMでも紹介した”秋味ごはん”という炊き込みご飯が大反響をいただき、作り方のお問い合わせもたくさんいただきました。自分で調合する手間なく、「昆布つゆ」1本で簡単においしく味がキマルというのがご好評いただいた理由のようです。
ちなみに、クリーム色の地に昆布が描かれた「昆布つゆ」ラベルは女性デザイナーによるもの。発売にあたって数点のデザイン案がありましたが、調査をしたところダントツの人気で決定しました。
「昆布つゆ」の味は、この20年大きく変わっていません。
最近は他社さんのつゆの味作りもまろやかさを意識した商品が多くなってきており、味わいの軸としてヤマサ「昆布つゆ」がスタンダードになりつつあるように感じています。
開発にたずさわった者の思いとしては、この「昆布つゆ」を”お母さんのつゆ”では終わらせず、もっと若い方にも継承され『我が家の定番の味』になって欲しいと願っています。
そのためにも、商品の持つ魅力やおいしさを私たちも積極的にお伝えしていきたい。
例えば「昆布つゆ」はこれ一本でも味がキマるのですが、実は姉妹品の「昆布つゆ白だし」と割ってもとてもおいしいんです。
定番の炊き込みご飯でも、かしわ飯は「昆布つゆ」、栗ごはんは「白だし」、かやくご飯は「昆布つゆ」と「白だし」を割ってとさまざまなアレンジが効きます。
いろいろ試して、楽しんで、ヤマサの「昆布つゆ」で”我が家の味”を作って頂ければ、これほどうれしいことはありません。