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プロの料理人が読んでいる情報誌

  • しょうゆは、江戸そばの味の決め手。 最も大切にしている調味料です。

    プロの技 拝見


     皇居から中央省庁の並ぶ霞ヶ関、虎ノ門へと続く桜田通り。由緒あるこの通り沿いに、老舗そば屋の一つ「巴町砂場」があります。発祥は大坂城の築城時、砂置き場近くで賑わっていた数店のそば屋だと言われます。時を経て江戸へ移り住んだとき、大坂での通り名「砂場」を屋号に用いたそうです。
     当初は虎ノ門にあり、江戸城から見て窪地にあたるため、久保町砂場と呼ばれていました。その名は1815(文化12)年の飲食店番付にも残っています。後に大名屋敷の整地が行われ、1839(天保10)年にいまの地に移転。江戸のしきたりにならって当地での開業から数えると、5代目が現在の店主、萩原昭氏です。

     江戸そばは実を脱穀して製粉したそば粉を使うため、白っぽくなります。「それを細く打つのが、江戸のそば職人の粋ですね」と萩原氏。職人は食べでのあるそばを好みましたが、辺りは武家や寺院が多く、人々の口には細打ちで小盛りのそばが合いました。昔は間食(まぐい)であり、巴町砂場も盛り一枚は約半人前。細打ちのそばをいかにふわりと盛ってみせるかが重要だ、と教えられたそうです。
     萩原氏は日本料理店で修行した後、自由が丘での開店に携わりました。こちらは住宅街にあり、家から足を運んでもらうため、さまざまな工夫を凝らしたそうです。先代の体調悪化に伴い約20年で店を閉じ、巴町の店へ戻りました。

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     そばが主役とはいえ、麺とつゆのふたつで味は完成します。伝統の味を守らなければならないし、時代により変わっていく味覚にも合わせなくてはなりません。その核となるのが、しょうゆだと言います。「いまの時代、しょうゆの味だけで続けている店は、そば屋と鰻屋くらいではないでしょうか」と萩原氏。「しょうゆは、価格が高ければいいというものではありません。特にヤマサのこいくちしょうゆは、そばとの相性もよく、江戸そばの味を決める役割を担っていますね」。
     料理人として、若いうちは基本が大事だといいます。包丁もめん棒も、一つひとつ基本に忠実に。あとは数をこなしていくことで、〝自分の〟基本ができるもの。「まずは自分のスタンダードを作ること。そうすることで、伸びしろができ、後で応用や発展が効いてきますよ」と語っていただきました。

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    「巴町砂場」
    東京都港区虎ノ門3-11-13
    電話:03-3431-1220

    ●巴町砂場/五代目 萩原 昭 氏

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